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【書評】文芸誌『文藝』 文藝新人賞作品『死にたくなったら電話して』

以前の

【書評】記事で「新潮新人賞作品」『指の骨』

を紹介し、

その中で、今回は3誌の「新人賞」発表があるため、久しぶりに「純文学雑誌」を

買い込んだ。と書いたが、今回はその1つ

「文藝新人賞作」 李龍徳 著 『死にたくなったら電話して』

をご紹介したい。

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2014年下半期「芥川賞直木賞」候補作品記事はこちら

【2014・平成26年下半期】第152回芥川賞・直木賞候補10作品決定!注目ノミネートは!? - [ゐ]ゐ太夫のぶろぐ

大学三浪中で、エリート家族の中でひとり出来が悪く、

両親からほぼ無視されて思春期を過ごした「徳山」が主人公だ。

三浪が決まり、家を出てチェーン店の居酒屋でバイトをしながら、

生活費と学習費を稼ぐ。

徳山は、外見は高身長でそこそこ顔も良いのだが「内省的」で「自己肯定」が

出来ず煩悶とする日々を送る。

ある日、バイト仲間と自宅とバイト先のある大阪・十三の「朝キャバ」へ行き、

そこでその後、彼女となる「初美」と出会う。

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初美は徳山を初めて見た瞬間に「自分と同じ人間だ」と分かったらしいのだが、

初美の素っ頓狂な登場シーンといい、残虐・猟奇的な蔵書の数々といい、

彼女は頭の良さに加え、何かしらの不安定さを感じさせる。

そして徳山は初美に惹かれていく…

といった感じで話は進むのだが。

作者の李龍徳氏については、

「奇をてらいながらもリアルさを失わない」

「ただひたすら虚無感を漂わせつつ、初美の言葉を使って現実社会を描く」

「話に引き込む力」があると感じた。

ただ、ラストに向かっていくシーンで、破滅へと向かっていく2人に対し、

敢えて現実世界の陽なる考えをぶつけ、現実へ引き戻そうとし、

2人はそれを葛藤することもなく拒絶するという箇所があるが、

どうもあっさりしすぎていて、そこがリアルでいいと思う反面、

違う表現や対比の仕方で、破滅を際立たせる方法も

あったのではないか?という感想を持った。

選考委員の方々の間でも議論があったという「メール」の部分だ。

ただ、本当の虚無感てこんなモノだなとも考えられ「陽なるメール」不要と

思わせるのも作者の意図なのか?

まだ、もうひとつの「文藝新人賞作」は未読なのだが、

受賞された李龍徳氏の次作が楽しみになった。

いわゆる「純文学」なるものも、まだまだ捨てたもんじゃない。


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