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【書評】オール読物 第94回 新人賞作品『花村凜子の傘』 榛野文美 著

文藝春秋社「オール読物」2014年11月号

第94回「オール読物新人賞作品」榛野文美 著『花村凜子の傘』

を読了。

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舞台は1970年代、死体役ばかりの女優静子は撮影所勤務の男と
不倫の関係にある。

憧れの花形女優であった「花村凜子」との思い出に浸りながら自身の
役者としての境遇、私生活では本妻が居ながら不倫を続ける自分と
本妻、後に出てくる若い女優と自身の境遇の差を比較しながら、
自己を内省しつつ話は展開していく。

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最近、久方ぶりに「純文学雑誌」を読み漁った私としては、
これはいわゆる「エンターテインメント系」の「オール読物」ではなく、
同じ文藝春秋社ならば「文学界」の方に載るべき作品なのではないか?
という疑問も抱かされた作品だ。

一人称視点で描かれ、死体役で撮影所とそれに程近い自宅を行ったり
来たりの日々を送り、自己を肯定することが出来ず自己憐憫とも
取れる屈折した生活を送る主人公静子を描き続けているのだ。

題名にもなっている「傘」は花形女優の「花村凜子」と自身の

二つの関係性に於けるメタファーなのだろう。

(余り詳細に書くと、物語総てを語ってしまうので
分かりにくい説明だがご容赦頂きたい)

私の若き頃からの永遠のテーマでもあるのだが

「純文学」と「エンターテインメント」の定義や境界とは何か?

という疑問が一層強くなった。

「死体役ばかりの女優」を主人公に持ってきた発想の独自性が
面白いのと、選考委員の方々の意見にもあった「女の情念」というものが
感じられ、物語の世界へ引き込む力は評価に値する。

作者の榛野文美さんが、受賞後初作品をどういう形で出してくるのか?は
非常に楽しみでもあり、今作でも見せたこれまでにない発想にも
期待したい。

オール讀物 2014年 11月号 [雑誌]

オール讀物 2014年 11月号 [雑誌]

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