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【書評】宮下奈都『羊と鋼の森』 2016本屋大賞受賞作!第154回直木賞候補作!

最終更新:2016年4月12日 本屋大賞受賞

著者:宮下奈都(なつ) 『羊と鋼(はがね)の森』 出版:文藝春秋社 2016本屋大賞受賞作! 感想・レビュー・あらすじ

本作読後「丁寧に生きること」の大切さを改めて、考えさせられた。これまでにも何気ない日常生活を日々大切に送っている人を多く描いてきた宮下氏。

本作は「ピアノの調律」に魅せられた物静かな少年が、自分は調律師としてピアノとそれを弾く人にどう向き合うか?強い信念を持ちながら人として、調律師として成長していく姿を、ピアノの旋律の様な調べで描いた作品だ。

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ISBN-4163902945


北海道の山深い村で、自然と共に育った少年、外村(とむら)

彼が17歳の高校生の時、たまたま教師から、放課後訪問者が来るので、体育館の鍵を開ける様、頼まれる。

それは、何となく高校生活を送ってきた外村にとって、自分の一生を左右する運命的な出会いの瞬間だった。

誰が来るのかさえ知らされずに、鍵を開けに行った外村だが、そこでピアノの調律師・板鳥(いたどり)と出会い、音の景色を奏でる様な見事なピアノの旋律に、一瞬にして魅せられ、板鳥に弟子入りを乞う。

しかし板鳥は、弟子を取るような分際ではないとし、調律の学校へ通うことを勧め、外村は2年間の専門学校生活を終え、板鳥の勤める小規模な楽器店で、調律師として働くことになった。

楽器店に入社するも、超多忙の板鳥とはなかなか会う機会もなく、七年先輩の柳(やなぎ)に付き、顧客のピアノの調律作業に同行し、実地研修を送る。

羊の毛で出来たフェルトのハンマーが鋼の弦を叩くと、ピアノは音を奏でる。本作タイトルの由来でもある。

ピアノを弾ける訳でもない外村は、音が狂ってしまったピアノを音階通りに戻すことさえ難しさを感じ、加えて様々な個性を持つ顧客の希望する音を、忠実に再現することには、困難を極める。

なかなか会えない板鳥からは「焦ってはいけない。ホームランを狙わず、こつこつと日々を送ること」そして「この仕事に正しいかどうか」という明確な基準、正解は無いことをアドバイスされる。

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徐々に外村一人でも、仕事を任される様になり、板鳥の言葉通り「こつこつ」と丁寧に調律をし、成長していく外村。

毎日、仕事終わりに店にある6台のピアノの調律練習も欠かさない。

ところが顧客の希望通り、調律をしても満足されず、しばしば担当を変えられてしまうこともあり、外村は改めて調律の難しさを実感する。

ある先輩社員からは、顧客の希望をイチイチ真に受けず、ほとんどが本当の音が分からない素人客なのだから、ドンシャリという重低音と高音がくっきりした調律でいいとさえ言われてしまう。

しかし毎日、顧客とピアノに向き合う外村は、顧客の希望の音の背景にあるもの、そのピアノと顧客のそれまでの歴史や家族構成、ピアノを弾く環境と言った「言葉以外のもの」を汲み取り、理想の音を再現することの大切さを理解する様になる。

先輩社員とも打ち解け、ピアノとの向き合い方も理解しつつと、文字通り、外村自身の調律師としての成長を描き、物語は進んでいく。

そして、もちろん調律師としてだけではなく、人間としても成長を遂げていく外村なのだが、物語の終盤では、外村自身が大きく自分の未来を切り拓く出来事が起きる。

本作は、外村が森を彷徨い、森に守られ、そして森と共生していく様、人とピアノと共生していく様を、大げさな描写を使わずに宮下氏らしい、静謐さで描かれ、どちらかと言うと純文学的=芥川賞的な作品だ。

作者の宮下氏は第98回文學界新人賞佳作となった「静かな雨」でデビューしており、これまでの作品も併せて、本作はいわゆる純文学、エンタテインメントという垣根は不要だ。

日本文学特有の「純文学」と「エンタテインメント」(昔は大衆小説とも言われた)については、また稿を改めたいが、本作『羊と鋼の森』は内面の描写力と、物静かながらもぐっと引き込まれるストーリー展開に好感の持てる作品であることは間違い無い。

(154回直木賞候補作品紹介・寸評はこちら)
h-idayu.hateblo.jp

(第154回芥川賞候補発表! 全作品紹介とゐ太夫の寸評)
h-idayu.hateblo.jp

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