第2回目の書評は、花村萬月著『ブルース』
花村文学の要素である「暴力」「性」「青臭さ」がブルースを
枕に見事に織り交ぜられている作品だ。
己の才能を認めることが出来ず「ドヤ」に身をやつし、自問自答を
繰り返す主人公の「村上」、ハーフで美しい歌姫ながら
自己肯定出来ない「綾」、主人公に惚れながらも自分の存在意義とも
言える暴力を振るい威嚇するため日本刀を手放せないゲイのヤクザ「徳山」
3人の切なく、衝動的で、もの悲しい、ため息の出る様なブルースが、
調和と不協和のギリギリのバランスの境界線上で奏でられ、
物語は進んでいく。
これだけ書くと、ただのもの悲しい小説と思われるかもしれないが、
人生にも常に「双極性」「対局性」がある様に、この作品にも
ためらいがちな「前向きさ」「明るさ」もある。
綺麗ごとだけでは済まされない「人の生き様」というものを、
どうしても書かずにはおれないという花村氏の思いの詰まった文章に
心を打たれ放しになるだろう。
花村氏の「書き切った感」で読者は「読み切った感」に浸れる。
花村文学の読了後は、いつもそういう気分になる。
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