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【書評】レビュー 『二進法の犬』 花村萬月 著 

『二進法の犬』 花村萬月 著 光文社

主人公、鷲津が家庭教師として受け持つことになったのは武闘派極道組長の娘、倫子。

鷲津は倫子の家庭教師と同時に、組長である父親の乾のパソコン講師にもなる。

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性・愛・暴力。

今回も花村萬月氏の三大要素が、複雑に絡み合っていく。

鷲津は、京大出身のエリートだが、自身が世間一般の枠に上手く溶け込めず、
世間を冷笑的に小馬鹿にしたアウトロー的存在であること、
そして、アウトローを気取りながらも、常に逃げ道という名の言い訳を作っている
弱い人間であることを自認している、

そこに19歳でありながら、自己を敢然と表現する倫子と出会い、
倫子の芯の強さと心に虚無的な闇を持つ二面性の不安定さに惹かれていく。

倫子もまた、自身と似た虚無的な感性と世間一般の常識というものに囚われない姿、
自分の弱さを素直に表現する鷲津に、母性にも似た感性を持って惹かれ合う。

そして鷲津は組長乾とのパソコンを介してのやり取りで、極道の社会は「シロかクロ」
「生きるか死ぬか」の二者択一であり、乾組の組員から組長の言葉は絶対であり、
組員は組長の「犬」として極道を全うするという、非常識で冷徹な掟のある社会が
あることを知り、自身を含めたエリート達の中途半端なアウトロー気取りを恥ずべきものとする。

本のタイトルでもある「二進法の犬」に繋がる。

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鷲津と倫子の恋はやがて壮絶なものとなり…

鷲津も極道の世界に一歩足を踏み入れ、その冷酷なまでの現実を垣間見ることになる。

そして、改めて自らの弱さを認識するのだが…

文庫本にしても、約1100ページほどの分厚い作品なのだが、
内容もそれに負けず分厚い。

息をつかせぬほどの物語の展開でありつつ、立ち止まってよく考えたくもなり、
またもや花村萬月氏の巧みな技にやられてしまったというにが正直な感想だ。

1100ページの本の重みは、この物語の世界の重みでもある。

二進法の犬

二進法の犬


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