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【書評・レビュー】第119回文學界新人賞作品 『トレイス』 板垣真任 著

今回の文学界新人賞は板垣真任氏の『トレイス』が受賞作となった。

最近、多くなってきた感のある「家族もの」であり祖父の「認知症」を扱った作品だ。

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大学受験に失敗した主人公と認知症で徘徊をするようになった祖父の
やり取りにならぬやり取りをメインにしながら、
とある地方の寂れてきた商店街の閉塞感と、
田舎独特の田畑や山の開放感の対比が上手く書かれている。

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寂れていく商店街と、その商店街の電化店の主人であった
しっかり者の祖父が認知症で徘徊をする辺りを、
変に隠喩的な表現やもの悲しい表現を使わずに、
淡々と書いていく様は好感が持てる。

表現力の巧さ、面白さも作者は持っており、舞台はのどかな田舎で、
ストーリーも淡々としたものだが、引き込まれる魅力がある。

選考委員の何人かの方も述べていたが、商店街の兄妹との絡みに
中途半端さが残り、ラストの下りも何か不自然さを感じた。

地方の問題、高齢化の問題は現代の日本が抱える問題でもあり、
ただ、現実のそれは淡々と日々送られていっている側面もある。

そういった描写力は優れており、今後の違った作品では、
どの様なストーリーで、巧みな表現力、描写を魅せてくれるのか、
楽しみでもある。

文學界2014年12月号 (文学界)

文學界2014年12月号 (文学界)


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