今回の文学界新人賞は板垣真任氏の『トレイス』が受賞作となった。
最近、多くなってきた感のある「家族もの」であり祖父の「認知症」を扱った作品だ。
【スポンサーリンク】
2014年下半期「芥川賞・直木賞」候補作品記事はこちら
【2014・平成26年下半期】第152回芥川賞・直木賞候補10作品決定!注目ノミネートは!? - [ゐ]ゐ太夫のぶろぐ
大学受験に失敗した主人公と認知症で徘徊をするようになった祖父の
やり取りにならぬやり取りをメインにしながら、
とある地方の寂れてきた商店街の閉塞感と、
田舎独特の田畑や山の開放感の対比が上手く書かれている。
【スポンサーリンク】
寂れていく商店街と、その商店街の電化店の主人であった
しっかり者の祖父が認知症で徘徊をする辺りを、
変に隠喩的な表現やもの悲しい表現を使わずに、
淡々と書いていく様は好感が持てる。
表現力の巧さ、面白さも作者は持っており、舞台はのどかな田舎で、
ストーリーも淡々としたものだが、引き込まれる魅力がある。
選考委員の何人かの方も述べていたが、商店街の兄妹との絡みに
中途半端さが残り、ラストの下りも何か不自然さを感じた。
地方の問題、高齢化の問題は現代の日本が抱える問題でもあり、
ただ、現実のそれは淡々と日々送られていっている側面もある。
そういった描写力は優れており、今後の違った作品では、
どの様なストーリーで、巧みな表現力、描写を魅せてくれるのか、
楽しみでもある。
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/11/07
- メディア: 雑誌
- この商品を含むブログを見る
ゐ太夫のぶろぐは「ブログランキング」に参加しております。
ご協力のクリックを頂ければ、幸いです。
書評・レビュー ブログランキングへ
(関連記事)
【書評】文芸誌『文藝』 文藝新人賞作品『死にたくなったら電話して』 - [ゐ]ゐ太夫のぶろぐ
【書評】オール読物 第94回 新人賞作品『花村凜子の傘』 榛野文美 著 - [ゐ]ゐ太夫のぶろぐ
【書評】文芸誌『新潮』 新潮新人賞作品『指の骨』 - [ゐ]ゐ太夫のぶろぐ
【書評】レビュー 『二進法の犬』 花村萬月 著 - [ゐ]ゐ太夫のぶろぐ