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【書評】文庫化!西加奈子著『サラバ!』第152回直木賞受賞作品!! あらすじ・感想・レビュー

最終更新:2018年6月23日 
今を時めく「西加奈子氏」の作品であり、第152回直木賞受賞作品。2017年10月6日文庫発売!

著者初の「長編小説」として、主人公「歩(あゆむ)」の半生を描いている。作品の舞台のイラン、大阪、エジプトは著者が実際に歩んできた場所でもある。

家族の紐帯とは?友情とは?そして常に一歩引いた第三者的傍観者であろうとする「現代日本人」へ強烈に問いかけてくるスケールの大きな作品に仕上がった!



「私を見て」周囲から注目されたいばかりに奇抜な格好をし、奇行に走り、結果周囲から阻害され、自分の世界に引き籠もる姉。

その姉を煙たがり「私、幸せになるの」と余り母親らしいとは言えない言動を取る母。

奇異な目で見られる姉も歩にも等分に愛情を注ぎ、母を愛し家族のために粉骨する父。

子供ながらに常に「一歩引き、自己主張をせず、周囲との調和を図り」大人びた子供、少年時代を送る主人公・歩。

歩は幼少期から姉を反面教師として生きる。

周囲の者を掻き回し、注目されたいがために奇怪な行動を取り、やがて姉は空気を乱す者として、奇異な目でしか見られなくなる。

歩は日本に戻っても、父親の転勤でエジプトでの生活に入っても、常に一歩引いた立場で一番目立つことを嫌い、空気の様な存在で居ながらも、自意識過剰に見える同級生らを冷笑し、自分に似た空気感を持つ親友を作る。

また、その様な姿勢で居ながらも、自分の見た目の良さから、クラスで2番手くらいの人気は維持している。

物語が進むに連れ、姉の奇行は進化(深化)し、姉の弟だということを周囲に知られることを忌避し、万が一知られたとしても安全圏に居られる対策を講じておく用意周到さも持っている主人公・歩。

上手く周囲に流されている自分を演出している。

上巻では、歩にとっては平和な青春時代が描かれているが、下巻に入ると大人になった歩に襲い掛かる数々の試練、葛藤が待ち構えている。

家族の離散、親友が取った突然の意外な行動、近しい人の裏切り。

大人になった歩に、否応なく降りかかってくる世間の荒波。

幼少期から奇怪な行動を取っていた姉の真意とは?

両親の間の決して明かされることの無かった秘密。






そして「サラバ」とは?

「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけない」

下巻途中からのスピード感溢れる展開と主人公・歩の葛藤は、当事者になることを避け、常に一歩引きKYと呼ばれることを怖れ、価値観を他人に委ねようとする「現代日本人」への作者からの強烈なメッセージではないか?

その下巻途中からラストへの話の展開には「そう来たか!」「う~やられた~」と思わず声を漏らしてしまった。

作家生活10年を迎えた西加奈子氏の、初の長編小説はスケールの大きさを感じさせる作品でもある。

そして、これまでの西作品に見られた魅力的に生き生きと作品内を飛び回る登場人物の描き方は健在だ。

乗りに乗っている感のある西加奈子氏そのままを表わす様な圧倒的な筆致と、描写力を改めて感じており、現在、他の直木賞候補作品も2作品併読中なのだが、今のところ「第152回直木賞」は西加奈子氏の『サラバ』になるのではないか?と筆者・ゐ太夫に想像させる、それだけのパワーを感じる作品であった。

※上記は「直木賞候補」ノミネート時に書いた書評です。

予想通り直木賞受賞され、個人的にも嬉しく思っています。

既に数多くの作品を世に出し、メディアへの露出も多い西加奈子氏。

今後、益々のご活躍にも期待しています!



西加奈子氏 最新作!『おまじない』

『サラバ!』文庫版!

※『サラバ!』が上・中・下巻の3分冊で文庫化されました!






※西加奈子氏 直木賞受賞後 初書き下ろし長編『まく子』が出版されます!

まく子 (福音館の単行本)

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(西加奈子著『漁港の肉子ちゃん』書評・レビュー・あらすじ・感想)
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