最終更新:2017年5月27日
第153回芥川賞(平成27年上半期)候補作品として6作品の発表が行われました。
第28回三島賞でも最終選考まで残った、又吉直樹『火花』は芥川賞にもノミネート。また三島賞ではデビュー作『指の骨』で高橋弘希氏は二作目『朝顔の日』でノミネートされています!
他候補4作は内村薫風氏『MとΣ』滝口悠生氏の『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』今回が共に4度目の候補となる羽田圭介氏の『スクラップ・アンド・ビルド』島本理生氏『夏の裁断』と、いずれ劣らぬ気鋭作家が名を連ねています。
【第153回芥川賞候補作品】
■又吉直樹著 『火花』 (文藝春秋社)
◇『火花』書評・レビュー・あらすじ・感想
又吉氏『火花』は先の三島賞でも最終候補の二作に選ばれ、異例の長時間に渡る選考会の末「三島賞」での受賞はなりませんでした。
文学的評価は高くこれまでも余り例のない「芥川賞」「三島賞」純文学二大文学賞両方にノミネートとなりました。
■高橋弘希 『朝顔の日』 (新潮社) (初出:新潮6月号)
高橋氏は新潮新人文学賞受賞作『指の骨』が第152回芥川賞候補となり、デビュー作が芥川賞候補という異例のノミネートが成されました。
同作品は先の「三島賞」にもノミネートされており、高橋氏はこれでデビュー作、二作目と連続して「芥川賞候補作品」に選ばれたことになります。
■島本理生 『夏の裁断』(文藝春秋社) (初出:文學界6月号)
島本氏は2001年に『シルエット』で第44回群像新人文学賞優秀作受賞。
2003年に『リトル・バイ・リトル』で芥川賞候補ノミネート。
『生まれる森』で第130回芥川賞候補ノミネート。
『ナラタージュ』で第18回山本周五郎賞候補ノミネート。
『大きな熊が来る前に、おやすみ。』で第135回芥川賞候補ノミネート。
『Birthday』で第33回川端康成文学賞候補。
『アンダスタンド・メイビー』で第145回直木賞候補ノミネート等、既に多くの文学賞の候補に挙げられ、著名作家でもあり、今回の芥川賞候補ノミネートが賞の趣旨から妥当かどうかという選考委員の議論も起きそうです。
■滝口悠生 『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』(新潮社) (初出:新潮5月号)
滝口氏は『愛と人生』で直近の三島賞候補としてノミネートされました。
また『楽器』で第43回新潮新人賞受賞。
『寝相』で第36回野間文芸新人賞候補にノミネートされています。
■内村薫風 『MとΣ』(新潮社)(初出:新潮3月号)
内村氏は今回、自身初の候補ノミネートとなります。
■羽田圭介 『スクラップ・アンド・ビルド』(文藝春秋社) (初出:文學界3月号)
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羽田氏は高校在学中に『黒冷水』で第40回文藝賞。
『走ル』で芥川賞候補ノミネート。
『ミート・ザ・ビート』で第142回芥川賞候補。
『ワタクシハ』で第33回野間文芸新人賞候補。
『盗まれた顔』で第16回大藪春彦賞候補。
『メタモルフォシス』で第151回芥川賞候補と第36回野間文芸新人賞候補に同一作品二賞ノミネート。
羽田氏は今回で4回目の芥川賞候補ノミネートになります。
◇『スクラップ・アンド・ビルド』書評・レビュー記事
■第153回芥川賞受賞作品直前予想
書評としては掲載していませんが、全作品を読了したうえで、予想は6本中3本を◎○▲で評価しています。
◎ 羽田圭介 『スクラップ・アンド・ビルド』
最近多い老人の介護や認知症を主題に置きながらも、独自のスタイルでストーリーを展開させ、よくありがちな介護する側、される側という対立軸に主題を持って行かなかったこと。
介護する側の孫を主人公にしているが、祖父の「ボケたふり」にも見える行動に懐疑的な嫌悪を抱きつつも、医学・介護システムの発達により「無理に生かされている祖父」に対し、人間の尊厳・人格の否定を感じ行動に移そうとする主人公の内面を見事に描いています。
社会問題ともなり、小説のテーマとしても多用されている介護問題を敢えてぶつけて、文壇だけでなく現代社会が抱える闇に挑んでいこうとする著者の将来性も評価し◎
○ 滝口悠生 『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』
自身の体験・記憶を現在の視点から過去を追憶するこちらも最近多用されている「時間軸もの」ですが、意図的に主人公の記憶を混濁させている節があり、文体の乱れ、物語、時間軸の乱れによって読者と主人公を一体化させようとする技術は高い評価に値します。
滝口氏も気鋭の作家として幅広い作品を多く描いており、独特の世界観や主題も持っており、今後の文壇を背負って立つであろうことも評価し○
主題も物語も全く違いますが、直近の三島賞で「時間軸もの」の一番手と言ってもいい上田岳弘氏の『私の恋人』が受賞していることは、今回マイナスに評価されるかもしれません。
▲ 又吉直樹 『火花』
島本理生氏『夏の裁断』と迷いましたが、島本氏はこれまでも優れた作品を多く描いており、今作での「芥川賞受賞」は違和感を感じるので、又吉氏を三番手に。
お笑い芸人が人を笑わせる陰にある、知られざる芸人の苦悩を描き、先輩芸人と主人公の究極の笑いとは何か?をベースにした掛け合いでのストーリー進行の独自性と奇をてらわない描写と技術を評価。
掛け合いの中で、それぞれの内面を丁寧に描き、当該作品に通底する葛藤や破綻と言ったものを、意図的に大仰に表現せず、シンプルに淡々と進行させる技術を評価し▲
(第153回「直木賞候補」発表記事はこちら)
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(ゐ太夫お勧め本)
芥川賞選考の裏側 、同賞の長い歴史や又吉氏も敬愛する太宰治の芥川賞事件の顛末も克明に書かれています!
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