F1を1大会2レースにして、低迷している人気復活の起爆剤にしようという案がF1ストラテジーグループ会合で真剣に議論され、FIAとFOMはこれを高く評価し来年からの導入を目指しているとFIAが発表。ドライバーの間でも賛否が分かれているという話が報じられています。
現在の土曜日・予選、日曜日・決勝から、土曜日に決勝レース1回目、日曜日に2回目を行うレース体系そのものを大きく変えようとするもので、ドイツのツーリングカーレース「DTM」が2レース制導入で成功しているため、F1界にも導入しようという思惑も見え隠れします。
果たして「2レース制導入」がF1人気復活に繋がるのか?そもそもなぜF1からファンが離れていったのか?他にやるべきことがあるのではないのか?ストラテジスト達の安易な発想は余計にファン離れに繋がる怖れさえあると言えます。
F1人気の下落に歯止めが掛からない。
日本ではF1の地上波放送が無くなって久しいですが、参戦マーカー、ドライバーを多く抱えるドイツでも地上波放送が打ち切られる可能性があることは、先日の当ブログでもお伝えしました。
そしていわゆるF1ドライバーの選手会にあたる組織「GPDA」が世界のF1ファンに向けて「F1人気再興」のためのアンケートサイトを開設し、現役ドライバーで「GPDA」ディレクターの、ジェンソン・バトンとセバスティアン・ベッテルが協力を呼び掛けていました。
また伝統あるグランプリレースの存続が危ぶまれるレースが、少なからず出て来ているのも事実です。
■2レース制導入案の骨子
以下正確を期すため「オートスポーツweb」に記事を引用します。
FIAは詳細については述べていないものの、1グランプリにおいてレースを2回行うという案が検討されていることが明らかになった。日曜にメインの決勝を行うことに変わりはないものの、土曜に予選と共に短いレースを行うという提案がなされている。また、全チームが3台目のマシンに若手ドライバーを乗せてレースを行い、上位に入ったドライバーを日曜のメインレースに出場させるという案もあるといわれている。
■ドライバーの反応
これに対しドライバーの間では賛否が分かれており、ベッテルは以下の意見を発しています。
「レースは大好きだけど、僕は伝統的なものにこだわる部分があるので、(2レース制には)賛成じゃない」とベッテル。
「単なる予選レースだと分かっているが、それでも日曜の見せ場が奪われると思う」「土曜にレースをするかどうかより、もっと解決すべき問題がいろいろあると思う」とベッテルは言う。
「大きな問題について考えるべきじゃないかな。たとえばヘルメットデザイン(固定化)の問題みたいにね!」
ニコ・ロズベルグは一定の理解を示しながらも、F1の伝統に言及。
「(2レース制は)DTMがやってみてかなりうまくいっていると思う。ファンへのサービスが増えるしね。どっちにしても僕らはサーキットにいるのだし、考えてみてもいいだろう」とロズベルグ。
「ひとつだけ残念なのは、F1の伝統から外れてしまうことだ。一番気がかりなのはそのことだ」
「テニスのグランドスラムが4大会でなく突然7大会になるようなものだ。これを気にする人は多いと思う」
一方、ルイス・ハミルトンは全面的に賛同の意見。
「週末のフォーマットが変わるならものすごく嬉しいね」とハミルトン。
「F1の世界に9年いるが、木曜、金曜、土曜、日曜の流れが全く変わっていない。よりエキサイティングにするために大きな変更を行うのはいいことだと思う」
「次の7年もまるで同じフォーマットだったら僕は我慢できないかもしれない」「こういうことを決めるときにはドライバーに相談してもいいんじゃないかな。理論上ベストな選択よりも直感で決めたことの方がいい場合もある。僕らに聞いてくれたらできる限り協力したい」
(上記引用:オートスポーツweb)
■そもそも議論すべきは?
まず先に議論すべきは、なぜこんなにF1人気が低迷したのか?の分析をしなければいけないはずです。
先日の「オーストラリアGP」でのマクラーレンホンダのパワーユニット交換に対する25グリッドずつ2台で50グリッド下がれという大幅なグリッド降格処分の複雑過ぎるルール。
グリッド降格で最下位まで落ちても、20台で走っている現在のF1レースではペナルティを消化出来るはずがなく、FIAはご丁寧に以下のレギュレーションも用意していました。
ケース(1) 未消化グリッド数が1~5の場合は、5秒加算ペナルティ
ケース(2) 未消化グリッド数が6~10の場合は、10秒加算ペナルティ
ケース(3) 未消化グリッド数が11~20 の場合は、ドライブスルーペナルティ
ケース(4) 未消化グリッド数が21以上の場合は、10秒ストップ・アンド・ゴー・ペナルティ
(引用:Number web)
この際、当初はバトン、フェルナンデス・アロンソ共に25番手降格処分というリリースでしたが、なぜかアロンソは20番手降格に変更にもなり、このレギュレーションを本当に理解しているのはFIAだけなのではないか?とも思ってしまうほど、複雑怪奇なものです。
レギュレーションを理解するのも困難ですが、バトン、アロンソは曲がりなりにも、元チャンピオンドライバーであり、その2人が最下位グリッドに並んでいる姿を、これまでの活躍を見てきたファンはどう感じるのか?
元を正せば、後発のホンダパワーユニットに信頼性、速さがないという問題から起きたペナルティなのですが、その元の元を正せば「シーズン中のテスト走行」を禁止するレギュレーションに加え、パワーユニットにアップデートをする際の「トークン」の使用上限数の規定でも、遅れて参入したホンダは不利なレギュレーションが適用されており、このレギュレーションの存在意義さえ理解に苦しむ始末。
また、ターボエンジンを含んだハイブリッドのパワーユニットに関しては、構造が複雑過ぎ、メカニカルに相当詳しいファン以外には全てを体系的に理解するのは難しいはずです。
またパワーユニットは回生エネルギーでブレーキにまで影響を与えるため、パワーユニットのトラブルのせいでブレーキが効かなくなるというドライバーへのリスクも高くなっています。
その回生エネルギーにも、運動エネルギー回生システムと熱エネルギー回生システムがあり、MGU-KがあってMGU-Hがあって…ERSとは…なんて話をしだすと、どれほどのファンが興味津々で話を聞くでしょう?
そもそもパワーユニット元年の昨年は、その余りにも貧弱なエンジン音でもファンは離れていきました。
大幅なレギュレーション改定の元にあったのは、環境問題に加え、開発にお金が掛かり過ぎる故に参戦チームの公平を期すためというお題目がありました。
アロンソは以下の持論・意見を展開しています。
「(F1)マシンをもっと速くすべきだ。F1とGP2のタイムが今はあまり変わらない」
「もっとテストを増やし、マシン開発の自由度を高めるような規則にすべきだ。現状では冬の最初のテストでマシンを走らせた時点のポジションがシーズン最後までほぼ変わらない」
「自分たちも他も進歩はするが、規則がとても厳格で、エンジン開発が凍結され、空力面もかなり制限されている。そのためにあまり開発ができないんだ。それによってレースが予想しやすくなり、すごくつまらなくなってしまう」
(引用:オートスポーツweb)
現在のレギュレーションは、コストに対する公平性は担保されている様に見えますが、シーズン中のテスト禁止は後から参戦したチームに不利な規定になっています。
また、ホモロゲーションを受けるまでに短期間で一気に大勢で開発するために、レベルの高い技術者を多く抱えたチームは有利であり、やはりワークスチームに軍配が上がります。
結局、現在のレギュレーションではアロンソが言う通り、シーズン前のテスト順がシーズン終了まで続いてしまう。
下手をすれば、その序列は数シーズン変わらない可能性もある訳です。
■ハイテク技術・マシン>ドライバーの時代か?
また、今年のマレーシアGPでは無線で「どの走行ラインを走ればいいか?」とピットに教えを乞うたロズベルグの恥ずかしいシーンが国際映像に流れてしまいました。
彼は打倒ハミルトンのために、全車燃費が厳しかったカナダGPで「ハミルトンの残り燃料を教えてくれ」ということまでピットに聞く始末。
現在のモータースポーツでは「レーシングシミュレーター」で、かなり現実に近い練習走行が出来てしまい、実際に走ったことのないサーキットでも、マシンが速ければタイムを出せてしまうということも多くなってきています。(もちろん下のカテゴリーから相当なレベルにあるドライバーが集まってきていますが)
運転免許を持たずにF1に参戦した17歳ルーキー、マックス・フェルスタッペンは「シミュレーター」の申し子と言えるかもしれません。
また、今年のモナコGPのメルセデスのセーフティーカー導入中のハミルトンとロズベルグの逆転劇は「GPS機能とタイム予測計算」に頼ったチームピットのタイヤ交換の指示が、ピットアウトの瞬間にザウバーのマシンが横切りタイムロスをしたという、余りにもハイテク化し、それに頼り過ぎたために起きた事件でした。
最近は、スポンサーを連れて来られるドライバーが優遇されるという様なこともあり、一昔前より「マシン・技術レベル>ドライビング技術」「走行タイムがチームの力よって左右される」傾向をより強く感じ、ドライバーに強いカリスマ性を感じるファンが減っているのも事実です。
私、ゐ太夫は2レース制には強い違和感を感じ、DTMの様な1レース目の速い順にハンデのバラストを積むかもしれないF1は見たくありません。
先日の「ルマン24時間レース」が盛り上がったのは、主催のWECがふんだんにライブ・ダイジェスト映像を公開していることも要因のひとつだと思います。
F1の映像・動画はかなり厳正に管理されており、当ブログでもご紹介出来ないのが心苦しいですが、それがテレビ放映権となると巨額の放映権料が掛かります。
放映権料と視聴率を天秤に掛けると「地上波放送」がなくなり、ファン離れが加速するのも致し方ない事実です。観戦チケットも高い。
ファンが見たいのは、純粋に熾烈なバトルであり、現行の複雑なペナルティルールやレースの醍醐味を削ぐレギュレーションではファンは離れていく一方です。
開発費はある程度掛けてもシーズン中の開発テストは行い、チームの凌ぎ合いも見られる様な展開にすべきです。
人為的な公平性は面白みに欠けます。
ワークスチームが有利なのは自然な流れであり、そこに食い込んでいく伏兵的なプライベートチームと才能ある若手ドライバーが突如出てくる。
すべて昔に戻せとは言いませんが、まずは現行レギュレーションの問題点を洗い出し、改正すべきはすることがF1人気復興の一番の近道だと思っています。
(2016F1スケジュール・日程、チーム・ドライバー 新レギュレーション)
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