第115回「全米オープンゴルフ2015」は、ジョーダン・スピースの数々の記録を伴った優勝で幕を閉じた。マスターズに続いて挙げたメジャー2勝目は1922年あのジーン・サラゼン以降「最年少」この2大会を同一年に連勝は史上最年少記録となり、同一年2大会優勝もこれまで、クレイグ・ウッド(1941年)、ベン・ホーガン(1951年、1953年)、アーノルド・パーマー(1960年)、ジャック・ニクラス(1972年)、タイガー・ウッズ(2002年)といったレジェンド中のレジェンドしか成し遂げていない記録となり、その他にも数々の記録を打ち立てた。(スピースについては別項で改めて触れたい)
今回はその「全米オープンゴルフ2015」が開かれた会場として使用されたコース「チェンバーズ・ベイGC」について検証したい。
チェンバーズベイとは?
今季メジャー2戦目の第115回「全米オープンゴルフ」(USオープンゴルフ)が開催された「チェンバース・ベイGC」は2030年の「全米オープン」開催のために元々砂利の採掘場の跡地だった場所に8年前に作られたばかりのパブリックコースだ。
これまで「全米アマチュア選手権」は2010年に開催したことがあるものの、プロの大会に至ってはレギュラーツアー、下部ツアーも含め、全く開催の経験がないコースでもあった。
なぜ2030年開催予定コースが15年も前倒しされたのか?他の名門コースが開催辞退をしてきたため、他に候補が無くなり「チェンバーズ・ベイGC」での前倒し開催が決まったというのが真相の様だ。
チェンバーズ・ベイに生えた雑草「ポアナ」とコースレイアウト
アメリカメジャーでは珍しいリンクスコースであり、明らかに「全英オープン」を意識しスコットランドから「フェスキュー芝」を輸入し、アメリカメジャーでも「全英」の雰囲気を出そうとした意図があった様だ。
しかし、全米オープンゴルフ開催が近付きつつある時期に問題が発生した。せっかく輸入して植えたフェスキュー芝が、日本では「スズメノカタビラ」という名で嫌われている雑草「ポアナ」がどこからともなくやってきて群生しだし「フェスキュー」を枯らし始めたのだ。
日本でもなかなか除草出来ず、いくら抜いても生えてくる雑草で、雑草だけに本来の芝より生命力の強さは非常に高く、周囲の植物を死滅させることもよくあるようだ。
USGAの担当者の話として、このポアナ芝を「全米」までになんとか駆除しようと頑張ったが全く除草に追い付かず、グリーンにまで生えてしまった状態で今回の「全米」を迎えることになってしまった様だ。
元来、難易度が高いコースセッティングで有名な「全米オープンゴルフ」であるので、別にオーバーパーの優勝者が出ようが驚きはしない。
しかし今回はグリーンとフェアウェイの境界も分からない様な状態で、苦肉の策だと思うが白線を引き境界線を示したというがテレビで見る限り、その境界はほとんど分からない状態。
そして何より大問題だったのは、ポアナの雑草が生えてしまったグリーンに対し仕方なくローラーで踏みならしガチガチに固めたらしいのでが、グリーン自体は異常に固くなり超高速グリーンに。
そして、パッティングしたボールは結局飛び出た「ポアナ」に蹴られ、ライン通り打っても方向は変わる、ショートしてしまうという残念なシーンが何度も見られたことだ。
また松山英樹がバーディーパットに入ろうとしたホールでは、真横に貨物列車の線路があり、ちょうどパッティングに入ろうとした瞬間に特有のうるささの貨物列車が通過し始め、松山は派手派手しい貨物車両が走行する姿を完全に視界に入れながらのパッティングを余儀なくされた。
レジェンド・現役プレーヤーの声
現地テレビ解説を務めたゲーリー・プレーヤー
「今まで人生で見た中で、一番不愉快なコース」としたうえで、
「グリーンを1ydショートしたら、50ydも戻ってしまう。6mのパットを打つのに、6mも右や左に向いて打たないといけない。これは悲劇だ。全長7900yd!世界が水不足に苦しんでいるのに、このコースがどれだけの水を消費するのか?もし、ハンデ15、16の人が来てプレーをしたら、110を打つだろう。ここはパブリックコースなんだ。そんなゴルフ場はハッピーじゃない」
「もっと人々にプレーの楽しさを伝えて、実際にプレーしてもらうようにしないといけない。もっと短時間で、楽しくできるようにしないといけない。正しい方向でゴルフをプロモーションしないといけない。なぜこんなことが起きているのか?それは球がどんどん飛ぶようになって、ゴルフ場がそれを防御しようとするからだ。グリーンに起伏をつけ、グリーンの手前にバンカーを作る。プロゴルフは良いかもしれないが、アマチュアゴルフは危機に瀕している」
金曜の固く締められたコースについて、ヘンリック・ステンソン
「ばからしいギリギリのライン」
パトリック・リード
「18番は2オンしたけど、普通のパットをしてカップのそばに止めることは不可能だった。“ミッキーマウス・ゴルフ”(ゲームのようなゴルフ)をしないといけないなんて、良い終わり方とは思えない」
優勝したジョーダン・スピース
「今までプレーした中で、一番ばかげたホールだ」
と、不評が続出した。
(上記引用:GDO 一部著者要約)
大会運営としての問題
パブリックコースであるためもあってか、ギャラリーが入れるスペースが非常に少なく、全くの無観客状態のホールがあったかと思えば、バンカーにまでギャラリーを入れざるを得ないホール(救済措置はあったようだが)もあり、仮設の観客席も余りスペースを取れない状況で、メジャー大会を楽しみにしてきた大勢のギャラリーを受け入れるキャパシティがないことも露呈した。
松山英樹は大会前から「チェンバーズ・ベイ」について『「全英オープン」を1日で36ホール廻った様な感じ』だとコメントしており、選手達は肉体的にも精神的にもかなりの極限状態まで疲労困憊したことだろう。
結局、大会運営側のUSGAは開催中に出た数々の不満の声に、最終日は水を撒いて対処した。
筆者・ゐ太夫は、いくら難易度が高かろうが、それこそ「プロの技」が見られるいい機会だと捉えているし、例えば「全英オープン」の様なリンクスで強風が吹きすさぶ中、ティーショットを少し外してしまっただけで、背丈ほどあるラフに打ち込み、挙げ句ロストボールを宣告せざるを得ないのも、醍醐味だと思っている。
ただ、今回の全米オープンの「チェンバーズ・ベイ」はとってつけた様に全英風にしようとし「フェスキュー」を植えて、海沿いのリンクス仕立てにしようとしたが、グリーンにまで雑草ポアナが生えてしまい、グリーン上はトッププロの技術を披露する場ではなく、運試しの場になってしまったこと。
テレビ的にも、グリーンオンしたのか?してないのか?も分からない状況や観戦ギャラリーにもフレンドリーでない今回の全米コースの選択はUSGAの完全なミスであったと言わざるを得ない。
メジャー大会は随分先まで開催予定コースが決まっているが、もしまた「チェンバーズ・ベイ」で開催するのであれば、現在の「整備不良」の状態が解消され、ある程度ギャラリーが観戦出来るスペースを設けてからにするべきだ。
アメリカが渇望していたタイガー・ウッズに次ぐスピースというスターの出現の場になったから良かったが、ジョーダンの数々の記録を打ち立てた「優勝」が無ければ、もっと非難の声は大きかったに違いない。
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(松山英樹の強さの理由と課題検証記事~ニクラスの評価編はこちら)
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