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【文学賞】2016年本屋大賞ノミネート・候補10作品一覧!作品あらすじ・書評・著者紹介

更新:2017年1月19日
「書店員が選んだいちばん! 売りたい本」のフレーズで始まり、今年で13回目を迎える「2016年本屋大賞」のノミネート・候補作品が発表されていますので、ご紹介します!

今回は本屋大賞史上初めて、又吉直樹氏の芥川賞受賞作『火花』東山彰良氏の直木賞受賞作『流』が揃ってノミネートされています。

今後は、二次投票を経て、2016年4月12日に大賞作品、翻訳小説部門が発表されます。

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【目次】


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2016本屋大賞は宮下奈都氏『羊と鋼の森』に決定しました!
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2016年 本屋大賞 候補作品


『朝が来る』 辻村深月(つじむら みづき) 文藝春秋

本作は、代理出産を巡り親子と生みの親の葛藤・苦悩を描いた社会派ミステリー作品。


辻村氏は、山梨県笛吹市出身。ミステリーのジャンルで、数多くの作品を上梓し、既に直木賞を受賞しています。

2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞し、作家デビュー。

その後、二度の吉川英治文学新人賞候補を経て、2009年『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』では、第142回直木賞候補、第31回吉川英治文学新人賞(2010年)の両賞候補。

2011年には『ツナグ』が4度目のノミネートで、第32回吉川英治文学新人賞受賞。

同年『本日は大安なり』で第24回山本周五郎賞候補。『オーダーメイド殺人クラブ』で第145回直木三十五賞候補。

そして、2012年に『鍵のない夢を見る』で第147回直木賞を受賞。同年『オーダーメイド殺人クラブ』で第25回山本周五郎賞候補。

今回の『朝が来る』は第11回の『島はぼくらと』第12回『ハケンアニメ!』に次ぐ、3年連続の本屋大賞ノミネートになります。


『王とサーカス』 米澤穂信(よねざわ ほのぶ) 東京創元社

これまでの米澤作品にも登場する主人公が新聞社を辞め、フリージャーナリストに転身。

海外旅行特集執筆のため訪れたネパールで、実際に起きた王宮殺人事件に巻き込まれ、その真相究明のため取材活動をするも、ジャーナリストの使命とは何か?に葛藤する主人公の内面を鋭く描いた作品です。

『王とサーカス』ゐ太夫の書評

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米澤穂信氏は岐阜県出身。独特の世界観を持ったミステリー作家で、書店員をしながら執筆活動に勤しみ、このジャンルで確固たる地位を築いており、まさに本屋大賞に相応しい作家とも言えます。

米澤氏は、2001年「氷菓」で第5回角川学園小説大賞(ヤングミステリー&ホラー部門)奨励賞を受賞し、デビュー。

その後「心あたりのある者は」『追想五断章』と2度の日本推理作家協会賞候補を経て2011年に『折れた竜骨』で第64回同賞受賞、また同作では、第24回山本周五郎賞候補。

2014年には『満願』で第27回山本周五郎賞を受賞。本作は第151回直木賞候補、第12回本屋大賞にもノミネートされ、今回『王とサーカス』で本屋大賞は2年連続のノミネートとなります。

『満願』ゐ太夫の書評

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『君の膵臓をたべたい』 住野よる 双葉社

住野氏は小説投稿サイト「小説家になろう」で、執筆投稿した本作が双葉社編集者の目に止まり、出版、デビューした異色の経歴を持つ作家です。

本作『君の膵臓をたべたい』は発売1ヶ月で10万部を超え、映画化のオファーが殺到し、二作目となる『また、同じ夢を見ていた』も間もなく発売される等、注目を集めています。


『教団X』 中村文則 集英社

日本国外でも作品が出版され、高い評価を受けている中村文則氏が、カルト宗教をモチーフに、神とは?国家とは?運命とは何か?を描いた長編挑戦作です。


中村氏は、愛知県名古屋市出身。純文学作家としてデビューするも、その枠を超えた作品は海外でも評価を受けています。

2002年に『銃』で第34回新潮新人賞を受賞しデビュー。

2004年には『遮光』で第26回野間文芸新人賞受賞。

2005年『土の中の子供』で第133回芥川賞を受賞。

2010年には『掏摸<スリ>』で第4回大江健三郎賞受賞。

2014年にアメリカのハードボイルド作家であったデイビッド・グーディス氏を記念した同名賞を受賞しています。


『世界の果てのこどもたち』 中脇初枝(なかわき はつえ) 講談社

先の戦中に、家族で高知から満州へ渡った幼い主人公珠子。言葉も通じない途方もなく広い大地の満州で、珠子は朝鮮人の娘美子(ミジャ)裕福な家庭の娘茉莉と出会い、ある出来事をきっかけに仲を深めていく。

しかし終戦を迎え、珠子は残留孤児に、美子は日本に渡り差別を受け、茉莉は横浜の空襲で家族を失う。散り散りになった三人の人生と満州での思い出。運命に翻弄される三人を通して、あの戦争の意味を問う作品です。


中脇氏は、徳島県で生まれの高知県中村市育ち。児童文学作家としても活躍。

高校在学中の1992年『魚のように』で第2回坊ちゃん文学賞を受賞し、17歳で小説家デビュー。

絵本や児童文学作品も多数上梓する中、2013年には『きみはいい子』で第28回坪田譲治文学賞を受賞しました。





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『戦場のコックたち』 深緑野分(ふかみどり のわき) 東京創元社

第二次大戦のノルマンディー上陸作戦にコック兵として従軍し、作戦の最中に起こる奇妙な事件、不思議な謎に遭遇し「戦場に於ける日常の謎」を解き明かしながらも、戦場に於ける同世代の友人との青春を描き、また、日常と非日常が交錯する戦地での極限の緊張感を見事に表現したミステリー作品です。


深緑氏は、神奈川県出身で、現在書店員の傍ら小説を執筆されています。

2010年に短編小説「オーブランの少女」で第7回ミステリーズ!新人賞(東京創元社主催)で佳作入選し、作家デビュー。

本作『戦場のコックたち』は、第154回直木賞候補、第18回大藪春彦賞候補になっており、今回の本屋大賞で、三賞にノミネートされることになりました。


『永い言い訳』 西川美和 文藝春秋

長年連れ添った妻・夏子をバス事故で失った作家の津村啓こと衣笠幸夫が同じ事故で亡くなった夏子の親友の遺族たちの1年間を過ごす間に、余りにも家庭を顧みず、妻のことをほとんど理解していなかった事実に愕然とし、新たな再生の姿を描いた作品。


西川氏は広島県広島市出身。映画の世界で活躍され、映画監督・脚本家として活動する傍ら、作家としての才能も発揮し、文学の世界でも高い評価を受けています。

自ら監督・脚本を手掛けた映画「ゆれる」では、カンヌ国際映画祭監督週刊に出品。

自身でノベライズした『ゆれる』では第20回三島賞候補。

『きのうの神さま』では第141回直木賞候補にノミネート。

本作『永い言い訳』は、第153回直木賞候補、第28回山本周五郎賞候補にもなり、今回の本屋大賞と合わせ、三賞ノミネートとなりました。

また、本作は映画監督でもある著者自らが映画化することが決定しています。


『羊と鋼の森』 宮下奈都(みやした なつ) 文藝春秋

ピアノとは全く縁の無かった主人公の青年が、ピアノの調律に魅せられ、その旋律を通じて世界と調和し、成長していく姿を静謐に描いた作品。

『羊と鋼の森』ゐ太夫の書評

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宮下氏は「静かな雨」が第98回文學界新人賞佳作に入選し、作家デビュー後、多数の作品を上梓。

2010年には「よろこびの歌」が第26回坪田譲治文学賞の候補。

2012年『誰かが足りない』が第9回本屋大賞で第7位入賞。

本作『羊と鋼の森』は第154回直木賞にもノミネートされました。


『火花』 又吉直樹 文藝春秋

『火花』ゐ太夫の書評

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天才先輩芸人との交流を通じ、お笑いという桧舞台の裏にある、葛藤、苦悩といった主題を、ありきたりな物語にせずに、しっかりと文学作品にまで昇華させつつ、又吉氏独特のユーモアとアイロニーも織り交ぜた作品。

一種、社会現象にまで発展した又吉直樹氏のデビュー作であり、第153回芥川賞受賞作。第28回三島由紀夫賞候補。村上龍氏の『限りなく透明に近いブルー』を抜き、史上最も売れた芥川賞作品でもあります。

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『流』 東山彰良(ひがしやま あきら) 講談社

著者の出身地である台湾を舞台に、友情に恋愛と青春群像劇として物語は瑞々しく描かれ進んで行くが、1975年総統の死をきっかけに起こる混乱と、祖父の死。自身のルーツを追い求めた先にあったものは?圧倒的なスケールで描かれ、直木賞選考会では、満場一致で受賞が決まった傑作。

『流』ゐ太夫の書評

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東山彰良氏は台湾・台北出身で、5歳の時に日本に移住。その後台湾に戻り、再び日本へ。現在は作家として活躍する傍ら、福岡で自身の母校を含む複数の大学で、非常勤講師も務められています。


2002年に「タード・オン・ザ・ラン」で第1回『このミステリーがすごい!』大賞銀賞及び読者賞受賞し、作家デビュー。

2009年『路傍』で第11回大藪春彦賞受賞。

2014年『ブラックライダー』で第67回日本推理作家協会賞候補。

2015年に『流』(りゅう)で第153回直木賞を受賞。今回の本屋大賞にもノミネートされました。


ゐ太夫の寸評

昨年2015年の本屋大賞は上橋菜穂子(うえはし なおこ)氏『鹿の王』翻訳小説部門ではピエール・ルメートル『その女アレックス』が受賞。

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上橋氏は児童文学、SF、ファンタジーといったジャンルでは既に高い評価を受けていたものの、圧倒的なスケールのストーリー創作力を世に知らしめ、商業主義との批判も浴びてきた本屋大賞の「書店員が一番売りたい本を選ぶ」という理念に適った形となりました。

今回の候補作品は前述の通り、同賞初の芥川賞・直木賞受賞作が入っており、また既にベストセラーとなっている作品が多く、新鮮味に欠ける感はあります。

筆者は、本屋大賞が「商業主義」という批判を受けることには、疑義を感じており、商業も何も絶対的に本が売れておらず、出版界が縮小していけば、それだけ魅力ある小説と出会う機会も減ってしまうことを考えると、本屋大賞という話題性のある賞が存在することは、重要なことだと考えています。

ただ、多数の本に接している「書店員さんならでは」の視点から、隠れた名作を世に出して貰いたいという思いもあり「発掘部門」を拡充させる、大賞候補作の内、数作をエントリーさせる等、独自色を出す方策はないか?と手前勝手に考えたりもしています。

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第156回芥川賞・直木賞発表!
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