中村氏の母校である芝浦工業大学と中村氏の共同で小説執筆支援ソフト「ものがたりソフト」を開発し、中村・中田両氏でこのソフトを使い執筆し、今回の作品が生まれたという、これまでにない斬新な手法を用いている。
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小説執筆支援ソフトを活用して書かれた小説「僕は小説が書けない」が発売 -INTERNET Watch
認知心理学で用いられる「プロトコル解析法」という手法を用い、米村教授が中村氏の発話内容を書き出し、思考の規則性を整理することで小説家の思考をシステム化。書き手の頭の中にある断片的な思考をつなぎ、1つのあらすじの作成をサポートしてくれるソフトを開発した。
このソフトでは、画面に出る質問項目に沿って答を入力していくことで、小説を全く書いたことのない人でも話のあらすじを作ることができるという。ヘルプボタンを使えば、あらかじめデータベース化されている文言がランダムで出てくるため、書き手の発想を広げることも可能としている。
実際に同ソフトで作成したプロットを基に書かれた青春小説「僕は小説が書けない」(中村氏と中田永一氏の合作)が11月1日に発売される。
私自身は上記のような「ソフト」が利用されていることを
殆ど意識せずに読んだのだが、読了後、詳しくこのシステムを知り、
どこまでが人為的なもので、どこからが「支援ソフト」を使ったものなのか?
これまでにない手法だけに、これまでにない疑問が湧いてしまった。
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作品自体は、高校の文芸部を舞台にした青春もので、
ひょんなことから文芸部に入部することになった主人公と、
主人公を半ば強引に、部に勧誘した1学年先輩の少女との、
一方的な恋愛?小説でもあり、キャラクターの濃すぎる
部員やOBとの様々なやり取り、父親との相克を乗り越え、
主人公が中学時代に断筆してしまった小説を、
最後まで書き上げる様が描かれている。
書くことの難しさと、書くと言うことの意味、
本当の家族の紐帯とは何か?を問いかけてもいる。
また、小説、文章を書いて生活をしていくことの難しさも
描かれており、この辺りは安易に小説家を目指す人へ
厳しい現実を提示している様にもみえる。
『僕は小説が書けない』の表題通り、主人公は書くことに
苦しむのだが、対称的な2人のOBに感化されつつ、
破天荒で感性のみで小説を書いているOBの生き様に魅力を感じ、
頭で色々考え過ぎ、準備段階で「書けない」と判断するのではなく、
まずは書くこと、書き続けることの重要性に気付かされる。
そして、主人公は不幸と共に生きてきたと思っていた
自分の人生観がガラリと変わることになり、一方通行であった
自分の生き方、対人関係に双方向性を持たせることになる。
一見単純な「青春小説」に見られ勝ちの作品だが、
要所要所に唸らされるところもあり、読了後は一服の清涼感を
味わえる。
ただ、作品序盤で、小説を書くために映画等の「シナリオ理論」を
OBが勧めてくる箇所があり、プロットの重要性も強調してくる辺りが、
「小説執筆支援ソフト」を用いて描かれている所以か。
今後、その「小説執筆支援ソフト」なるものが世に出てくるように
なるらしいので、私も一度は手に触れてみたいとも思っている。
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