2020年オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる「新国立競技場」を巡り、当初予算の1800億円から建設費が2500~3000億円と大幅に上回るため、国が東京都に整備費として500億円の負担を求めている問題で、日本スポーツ振興センター(JSC)は東京都との負担額の合意を先送りし、先に業者と建築契約を結び方針を固めたと報道されている。
下村文科大臣が東京都に200億円の負担を要求し、舛添知事は周辺整備として拠出できるのは50億円が限度とし、総工費の概算内訳と200億円の算定根拠を求めていた。
しかしJSCは7月上旬に契約しないと工期が間に合わないとし、都の合意を得ないまま、またその負担の根拠法を国が策定しないまま、契約を結ぼうとする暴挙に出ようとしている。
(2015年4月上旬の国立競技場の解体状況 撮影:筆者ゐ太夫)
そもそも「地方財政法」という法律があり、地方自治体が国の施設等の費用負担をすることは禁じられている。
そこで、下村大臣から要求があった際に舛添知事は「現行法」では周辺施設建築等(駅からのアプローチ等)の負担しか出来ず、国には総工費の内訳と都に負担を求める論拠となる法律策定が求められていた。
しかし日本スポーツ振興センター(以下JSC)は、工期が間に合わないとし、都の合意を得ないまま、ゼネコン業者と建設随意契約を結ぶ方針を発表。
憲法第95条に「ある地方自治体だけに適用をする特別法は、住民による住民投票で過半数の同意を得なければ制定出来ない」という規定も明記されている。
JSCは業者と契約額の合意を得て費用が確定するまでは公表出来ないとしているが、負担額概算の提示のみ、根拠法も示さぬまま、工期が間に合わないと国際的な信用問題にかかわるという事情を優先させる姿勢に、都民が納得するはずもないことは明明白白だ。
そもそも、当初の予算策定が杜撰過ぎる。
JSCは、今更人件費が高騰しているため当初予算より総工費が上がったと言うが、東京オリンピック開催決定の頃から、民間のゼネコンや建築業者の間では人手不足による工期の遅れ、人件費高騰、資材不足による部材の高騰で、一般住宅から大規模建築まで総工費が急騰していたことで、民間業者の頭を悩ませていた。
また、元の国立競技場の解体に関しても、談合の疑いや入札の不調を繰り返し、以前に建築・不動産の仕事もしていた筆者としては、このままでは逆算して建築の工期が間に合わないのではないか?という危惧の念を抱いていた。
また筆者ゐ太夫は、明治神宮外苑にあの様な建築物はそぐわないという議論がなされている頃に、東京でザハ・ハディド展も観てきたが、ザハ女史のコンセプトは理解しつつも、相当な費用が掛かりそうだなという印象を受けていた。
それを今になって、東京都民に負担を求め、工期が間に合わないから金額の提示をせず、法的論拠も示さず、建築契約を結ぶというのは余りにも酷い暴挙と言わざるを得ない。
筆者はザハ案のデザイン賛成派だが、杜撰な丼勘定といい加減な建築計画のつけの結果生じた負担を国民に負担させ、まだ不足する分に関しては都民に、これもまたいい加減な手順で要求してくるJSCの姿勢には呆れかえるばかりだ。
「地方財政法」に反しない論拠となる特別法を制定するにしても、前述した憲法第95条問題も出てくるが、もし「住民投票」をするにしても、その頃には既に建築契約は済んでおり、都民の過半数の同意が得られなければ、JSCは一体どうするつもりなのか?
工期が間に合わないから、契約を急ぐ。しかし「地方財政法」に関する「特別法」は制定出来ないとなれば他から予算を引っ張ってくるしかないだろう。
私も東京都民であるため、JSCと文科省の一連の要求は看過出来ず、せっかくの東京オリンピック開催の期待感にも水を差されたという残念な気持ちにならざるを得ない。
今後、JSC、文科省と東京都がどこに着地点を求めるのか?
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