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【書評・レビュー】万城目学著 『悟浄出立』 第152回直木賞候補作品 新潮社刊

万城目学氏の7年ぶりの「短編集」第152回直木賞候補作品としてノミネートされている。

中国の古典を題材に5編。これまでの「万城目作品」のイメージを覆し、表題作にもある通り中島敦氏を意識した漢文調で格調高い文体で描かれている。

著名な作品の脇役から作品世界を見る目線の面白さと、短編ならではの「その一瞬・瞬間」の切口の巧みさは流石だ。

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中国古典の脇役の人生の1編を切り取る。

何の予備知識もなく本書を読むと、作者が万城目学氏であることに
気付く人はそう多くないはずだ。

「悟浄出立」では沙悟浄を主人公にし、猪八戒の天界での栄光の伝説を知り、
なぜ今の様なだらしのない姿に成り果てたのか、当の八戒に聞く。

そこで八戒の意外な人生観を知ることになる悟浄に、
新たな価値観を呼び起こすのだが。

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以下「趙雲西航」「虞姫寂静」「法家狐墳」「父司馬遷」と

続く四作も、月並みな表現だが珠玉の作品達だ。

それぞれの古典大典の中から、どのシーンを切り取るか?に
万城目氏の選択のセンス、切り取ったシーンでの脇役達の
描き方のセンスは圧巻だ。

短編集と分かりつつももう少し長くても良かったのでは?と
思わせる作品もありつつ、短編だからこれだけの「切れ味」を味わえたという
相反する如何にも一読者の我儘且つ無粋な思いも抱いたのは正直なところだ。

万城目氏自身はこの様な短編集は「最初で最後」と発言しているが、
間違いなく今作は万城目氏の新境地であり、今後は一からの創作といった形で、
中長編でも是非この様な美しい文章を拝読したいものだ。

今回は先の西加奈子氏『サラバ』に続き、第152回直木賞候補作品の
書評二作目となった。

前回『サラバ』の書評では西加奈子氏を高く評価し直木賞受賞
筆頭候補に挙げたが、万城目作品も素晴らしく、甲乙付けがたいというのが
正直なところだ。

出来れば候補作全作品を「直木賞発表」までに全部読了させ、
ゐ太夫のぶろぐで拙い書評をご披露出来ればと思っている。

※この記事が2015年、平成27年「ゐ太夫のぶろぐ」の最初の記事となりました。
旧年中は読者の皆々様には拙文・駄文の類なる拙著をご贔屓頂き、誠に感謝申し上げます。
本年も「ゐ太夫のぶろぐ」のご贔屓の程を、何卒宜しくお願い申し上げます。
本年も皆々様に於かれましてはご多幸多からんことを祈念して、
新年のご挨拶と換えさせて頂きます。  平成二十七年 元日 ゐ太夫

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