今は書くことを止めてしまった謎多き伝説のファンタジー作家森和木ホリーに、その大ファンであり文学新人賞受賞後伸び悩む新人作家國崎真美が豪邸で住み込みの不思議な?弟子入りをする。
ホリーさんの長年の秘書?これまた謎の宇城圭子も交えた女性3人をメインに「書くこと」「人生とは?」を独特の視点や筆致で描いた作品だ。
國崎真美は、シリーズ絶筆となっている大ベストセラー小説『錦船』の大ファンであり、
作者の森和木ホリーさんを敬愛している。
國崎・森和木両者の編集担当である鏡味が、國崎真美の成長のため森和木ホリー邸での
住み込みの弟子入りを強引に決める。
ホリーさんに挨拶をする國崎真美は『錦船』シリーズに出てくる
両性具有の黒猫〈チャーチル〉と呼ばれることになる。
ホリーさんの長年の秘書を務める宇城には「特段何もすることはない」と
言われる不思議な住み込みの弟子入りとなる。
高齢であり、病にも倒れたホリーさんは既に「書くこと」を諦めていてのだが、
チャーチルこと國崎の「続きを読みたい」という熱望と國崎の衒いの無い言動に
徐々に影響されていく。
秘書の宇城も秘密の執筆活動を持っているのだが、ホリーさんの秘書に就任した当初に言われた
「あなたの本当の人生は?」という言葉を反芻する人生を送っている。
編集者鏡味のこれまでの謎の行動、そしてホリーさんのよき理解者であり、
共に手を携え作品を作っていった元夫の存在の行方と現在。
伝説の『錦船』はただの物語なのか?現実なのか?
國崎の作る得意の「コロッケ」を巡って、みんなの人生が大きく動き出す。
登場人物それぞれが非常に重要な役割を果たしており、
そのキャラクターも魅力的に描かれている。
「書くこと」とは?「人生」とは?「生き方」とは?
登場人物のそれぞれの葛藤や思いに、読者の私も物語に引き込まれ、
気付けば一緒に考えてしまう。
また、登場人物それぞれの距離感が近すぎず遠すぎず、微妙な距離感を保っており、
とかく人付き合い・対人関係が難しいと言われる現代社会に投げかける
新しい生き方の提示もしているのではなかろうか?
第152回直木賞の発表まで、あと数日。
この作品がどういう評価をされるのか?楽しみでもあるが、
ますます予想が難しくなってきたというのが正直な感想でもある。
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