『信長死すべし』著者:山本兼一 出版:角川文庫 あらすじ・感想
2009年の直木賞受賞作『利休にたずねよ』の山本兼一氏が、織田信長はなぜ本能寺の変で討たれたのか?歴史上裏切り者の誹り(そしり)を受け続けた明智光秀がなぜ信長を裏切ったのか?天下統一を目前にした信長に去来した傲りとも言える心理状態と、それを取り巻く人々の内心を見事に描ききった渾身の一作。
『利休にたずねよ』では「美」を究極まで追求し続けた千利休を、山本氏の「美」をもって見事に描いたが『信長死すべし』では、権力者達の公人としての「国家感」と個人・私人としての「内省」「不安・恐怖心」を鮮明に表現している。

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最近「本能寺の変」の定説を色々な角度から解釈した作品が多く出版されている。
「本能寺の変」は謎とされる部分が多く
裏で糸を引いてる人間、いわゆる黒幕がそれぞれの目的を果たさんと、
信長を討ったという話の展開でここ何年かで数冊発売された。

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山本氏の『信長死すべし』もそのひとつである訳だが、
いわゆる「謎解き」とは一線を画した作品だ。
長年の強敵であった甲斐の武田氏を滅ぼし「天下統一」が見えてきた信長。
常に遥か先を見続け、誰もが考えもしない気宇壮大な野心を持ち続ける信長は、
天下統一の先に明国へも攻め入る戦略を抱いている。
天下を睥睨し続ける男は、大阪に遷都することを時の天皇正親町帝に迫る。
正親町帝も、朝廷を軽視する信長の増上慢に怒りを覚え、忍従の日々を送る。
信長の朝廷軽視の先にあるものが何なのか?
国体護持に不安を感じた正親町帝は、側近の公家達に秘密裏にある重大な勅命を下す。
本能寺の変まで、あと38日間という短い期間を信長と正親町帝、それぞれを取り巻く人々まで
各章ごとに時系列で、その内心の増長、葛藤、不安、恐怖、打算といったものを見後に炙り出している。
この作品はいわゆる「謎解き」とは違うと前述したのは、本のタイトル自体が表わす通り、
正親町帝の勅命はまさにその言葉であり、各々がその勅命に対しどう思念し行動したのか?
その心理描写、心理戦の模様を描いているのだ。
この辺りの心理描写の巧みさは『利休にたずねよ』でも表現されており、
山本兼一氏の真骨頂でもある。
山本氏のこれまでの作品の「テーマ」と「登場人物の生き様」は
常に現代日本が抱える問題にも通底しており、深く考えさせられることが多い。
『利休にたずねよ』『信長死すべし』を読み、今後ももっと多くの作品に触れていきたいのだが、
山本兼一氏は昨年2月に逝去されており、もう新作が読めないということを考えるにつけ、
歴史・時代小説の文壇は、本当に惜しい人材を失ってしまったと思わざるを得ない。
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