更新:2017年5月27日
又吉直樹氏(ピース)の作品掲載により文藝春秋社が昭和8年から発行している純文学誌『文学界』が初めて増刷に踏み切ったという話題が先行した形となった今回の初純文学作品『火花』
『火花』の文学的評価は高く、先の第28回三島由紀夫賞候補、そして今回第153回芥川龍之介賞を受賞している。
物語は、とある花火大会でのお笑い芸人の漫才営業で同じ舞台を踏んだ他を寄せ付けない孤高の「天才芸人」の先輩、年齢的にも後がなく自分の「笑い」にも限界を感じつつある主人公との2人のやり取りとして進んでいく。
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熱海の花火大会での余興として主人公とその相方のコンビ「スパークス」が漫才をするものの、
舞台はビールケースを並べた上にベニヤ板という粗末さと、
お囃子の常軌を逸した爆音のため、漫才のために用意されたスタンドマイクは、
半径1メートルしか聞こえず、祭りのお客さんは誰も自分達に見向きもせず
不本意な形でネタの披露せざるを得ず、結局誰も聞いていないという不愉快さだけが
残り舞台を降りる。
その前に舞台に上がった地元老人会の爺さんの話が長すぎたため、尺(持ち時間)が
足りないまま次のコンビ「あほんだら」が舞台に上がる。
舞台の入れ替わりざまに「仇とったるわ」と呟いた後に舞台上で披露した
「あほんだら」の漫才は、これまた常軌を逸したネタで勝負し、
主催者側を怒らせる。
しかし、主人公の徳永は「あほんだら」の神谷の漫才に「自分が求めていた笑い」を見出し、
初めて飲みに行った居酒屋で神谷から突然「俺の伝記を作ってくれ」と頼まれ、
2人はその後も、事あるごとに行動を共にする様になるのだが…。
先輩・神谷は笑いにかけるストイックさ、天才的なセンスを持つが
周囲の人間と上手く関係が作れないほど尖ってもいる。
主人公・徳永は自身でどちらも中途半端なことを自覚している。
2人の普段のちょっとした会話にも、ボケとツッコミが絡み、
徳永も戸惑うと共に、読者をも戸惑わせながらも、そのシュールさに
思わず笑ってしまうシーンも多くあった。
「笑い」とは何か?「本当に面白いもの」とは何なのか?
「芸人としての生き様」とは?何か?
この辺りは現役のお笑い芸人「ピース又吉」の真骨頂とも言うべき、
リアリティーさで描いている。
「笑い」に掛ける2人の生き様の陰の部分では、大きな悲哀も抱えている。
破天荒な神谷に対し、尊敬はしながらもどこか冷めた目で見てしまう徳永。
その悲喜こもごもの対比、私生活から「ボケ」と「ツッコミ」の2人を描く力も素晴らしい。
「笑い」を突き詰めたい。しかし、生活もしていかなければいけない。
この辺りの心の葛藤の表現も良く、登場人物それぞれの人間臭さも魅力的だ。
「お笑い」を題材に取った「青春群像」として、とても好感の持てる、
読み応えのある作品だ。
これからの又吉氏の活躍に期待しつつ、どういう作品を読ませてくれるのか、
楽しみでもある。
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